おもと四方山話  NO14

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現在(いま)のおもと作りを考える

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大型の台風12号が香川県の上を通過しているようだが私の住む観音寺付近はほとんど風もなく時々雨が降る程度、このままで何事もなく過ぎてくれればよいのだが。
今年の予報では残暑がかなり厳しいと言われていたのでこのまますんなりと秋になってくれればと願うばかりである。昨年の暑さから見れば今年の夏は「過ごし易かった」と感じたのは私だけだろうか?
私がおもと界に入り教えられた事は「置いてある水苔を乾かしてはダメだ、常に湿らせた状態にしておけ」と言われた。ところが現在のように温暖化、温暖化と言われるようになると教えられたように常に湿らせた状態にして置くとかえって蒸れにより根オチを作る原因になると言われている、したがって夏場の灌水は少なくしていると言うのが現状なのである。抜き水は3〜4日に1回で後は乾いていればバラ水の様なやり方で上部を湿らせるだけと言う方が多い。ところがあまり水を少なくすると、葉の伸びが悪い、葉繰りが悪いと言う弊害が出て来る。私は「おもと」と言う植物は本来水が好きな植物だろうと思っている、水は好きだが何時までも水がある(帯水)と言うのは嫌う。その事は自生している「おもと」を見れば理解できる、適度に日光があたり、柔らか目の土(腐葉土が混ざっている様な)の斜面に多く自生している。この事は根の部分に空気も良く通り、そして斜面の為に水切れも良いと言う事になる、と言う事はその様な植え方、水のやり方をすれば良いのだがそううまくはいかないのが現実である。各人がそれぞれ自分の棚にあった水の掛け方、日の取り方等を見つけて行く他ないだろう。
温暖化の原因は人間の出すCo2が原因だと言う学者もいれば、過去の地球の歴史を見れば地球は暖かくなったり寒くなったりを繰り返して来たのでこれは自然現象だと言う学者もいる。どちららが正しいのか私ごときでは解るはずもない、只おもとを作って行く上では重要な問題であると言う事は解っている。
以前、四国の名作者と言われる方の中には夏の後半、「夜肥え(よごえ)」と言って夜の気温が下がり始めた頃(お盆が過ぎたあたり)から薄い水肥をやっていたそうな。夕方の水をやった後、水肥をやるのである、そして翌朝に水をやり鉢の中に残った肥料分を洗い流すやりかたである。このやり方は確かに理にかなったやりかたで、入梅後に上砂替えで肥料分をなくした後、おもとは夏の間に芋の中に蓄えていた栄養(肥料分)で夏を越してゆくので秋口の頃には栄養が足りなくなって結果、秋に出て来る葉は作落ちの様な細い葉が出て来る。新潟、山形と言った寒い地方の方の作を見れば止め葉まで幅の広い見るからに力のある葉が出ている。なぜか?答えは簡単である、夏の間でも肥料を与えているからおもとが栄養失調の状態にならないのである。それと寒い地方の木は葉持ちが良い、3年葉が残るのは当たり前で4年葉、時には5年葉を残した木さえも見る事がある、それに引き換え西日本の木は3年葉が残っている木を見る事さえまれである。これには様々な事が関係していると思うのだが、1番目はやはり気温だろう。いかに北日本と言っても最近の夏場の日中は30度を超える事も珍しくはないだろう、が夜間の温度が西日本とは圧倒的に違う。夜間の気温が低いので肥料あたりが少ないのだろう。葉を落とすのは植物が成長を続けて行く上で一番力(栄養)の必要な部分は生長点である、生長点に栄養を多く送る為に下葉にまで栄養を送る事が出来ないので下葉を落すのである。(只、年月の過ぎた葉を落としてゆくのは生き物の生理現象として致したない事であるが。)先に書いたように西日本では夏場には肥料は与えないので栄養失調状態になり下葉を犠牲にしているのだと考えられる。だからと言って西日本で夏場に肥料を与えて行けば結果は書かずとも解って頂けるだろう。その他葉の落ちる原因の一つに葉割れがある。春先首が太ったり、新根が葉を割って出てくると葉元が割れて来る、これで又葉が落ちる。気温に関してはどうしようもないのだがこの葉割れについてはある程度防ぐ事が出来ると思っている。それはアク水(灰汁)を与える事である、以前大将に「アク水はカリ分の補充のみならず、アク水をやる事により葉に弾力を付ける役目も果たす」と教えられた。当時まだ鉢数も少なかったのでアク水をやり続けたところ確かに葉割れが少なくなった、ところが葉割れが無くなると今度は首が太っているのかどうか不安になったのを覚えている。いつの間にかアク水もやらなくなっていたのだが最近業者仲間よりアク水をやると青煮えが出にくくなると聞き今春より再びやり始めた、そしてアク水の効果はそれのみでなくおもとの成長に大いに役立つとの記事もあるので結果についてはいずれご報告致します。
話が飛び飛びになりましたが西日本と北日本とではどうにもならない地域差があるのでまねる訳にはいかないので西日本で出来る事、又先のアク水のように良いと言われる事をやって行く他ないでしょう。とは言っても気温の違いだけではなく名作者と言われる方はやはり自分の作り方と言う事を確立しているのです。
もう一つ最近これも業者仲間との話の中でなるほどな〜と思った事を書いておきます。
7月に長野県において第11回萬風帳の色校正と今秋に業者組合で発行する「おもと360選」の校正に出席した帰りの列車の中での話。「あ〜あ帰ったら上砂替えをやらにゃ〜」と私、すると「家はそんなのやらないよ〜」とA氏、すると「家もやらない」とB氏、理由は「上砂替えなんかやるからせっかく休みかけた根に刺激を与えるから再び根が動き出して下葉を落す原因になるんだよ」と言う。上砂替えの時には首の周りの汚れを落とす為にブラシで洗う、これが刺激となる、根が動くと成長しようとする、成長するには栄養が必要となる、ところが上砂替えの時に肥料も取ってしまうから結果、先に書いたように栄養失調状態になる、こうなると生長点が優勢になるから下葉に行く養分が無くなる(少なくなる)ので下葉が落ちる、なるほど言っている意味は良く解る。上砂替えをしないので春から置いている肥料(固形肥料)が残る、古くなっているのでほとんど効き目は薄くはなっているが少しは肥料分もあるだろう、これで夏場の肥料不足も少しだが補える、うんうん、なる程、理にはかなっている。が、夏場の蒸し暑い時に「首元に汚れかす」を付けた状態で置いておく事には正直不安も残る。これはやはり自己責任において試してみるしかないのかな・・・。
おもと界には次のような言葉があるのもお忘れなく「おもとをなくする(痛める)には人から聞いた事を全部試す事である」。

アク水の効用については協会会報2009年6月発行の172号に「灰汁談義」と言う内容で加藤三穂氏が非常に詳しく書かれていますので、私のこのサイトを見て頂いている協会会員の方はご覧下さい。又、会員以外の方でサイトを見て頂いている方で読んでみたいと思われる方がありましたらご連絡頂ければコピーをしてお送り致します。